この記事は『100分de名著』の2021年1月11日放送回の復習です。
2021年1月4日放送回の復習記事はこちらをご覧ください。
こんにちは。
やっぱり働きたくないなと思うふくです。
でも働かないと生活できませんよね。
現代の日本社会であれば週40時間は働かなければ生活費が稼げない人がほとんどだと思います。
週20時間労働はだめですか?
この問いに対するヒントのようなものもカール・マルクスの『資本論』には書かれているようですね。
お金儲けをやめられない資本家
資本主義社会以前は「W-G-W」だったとマルクスは言います。
W:商品(ドイツ語のWareより)
G:お金(ドイツ語のGeldより)
生活のために商品を生産してそれを売ってお金に換えて、そのお金でパンなどの必需品を買います。
お金は単なる手段だったわけですね。
ところが資本主義社会では「G-W-G'」というものになります。
G'というのは商品を売ることによって元あったお金Gよりもお金が増えた状態です。
要するに商品を売ったために儲かったというわけですね。
「G-W-G'」をくり返せば、つまり手元にある資金を元に商品を生産して販売し、さらにそれによって得た資金で商品を生産して売るということをくり返せば、資本家はガッポガッポ儲かることができるわけです。
マルクスはこのような「資本」の特徴を「価値増殖の運動」と言っています。
資本主義社会では資本家にとってお金を稼ぐこと自体が目的になります。
利益を出し続けなければ資本家ではいられないからです。
より儲けるために資本家たちが選んだのが、労働者をできるだけ長く働かせることです。
日給1万円で7時間働いていた労働者が1万4千円分の労働を提供していたとしましょう。
この労働者の日給はそのままで労働時間だけを2時間伸ばせば、理論上1万6千円分の労働を提供してくれそうですね。
この6千円分の利益は丸々資本家のポケットに入るというわけです。
資本家はガッポガッポ、労働者は長時間労働に苦しむという構図が150年前から今までずっと続いています。
なぜ過労死はなくならないのか
残業代も出ないなんてやってられるか!!!
こんな会社辞めてやる!!!
そう何度も心に誓ったこともある読者さまも多いことでしょう。
いざとなれば労働者は逃げることができます。
パワハラや違法な長時間労働が蔓延している会社であれば1か月後に辞めないといけないなんていうルールなんて無視して辞めればいいんです。
でも実際に行動にうつしたことのある労働者はごくわずかです。
どうしてでしょうか。
マルクスによればそれは労働者には「2つの自由」があるからだそうです。
労働者の2つの自由
- 強制労働からの自由
- 生産手段からの自由
1つ目の自由は「強制労働からの自由」です。
労働者はだれの元で働くかを決めることがあります。
だれと雇用契約を結ぶかは自由です。
また自分のやりたい仕事に就くこともできます。
子どもが好きであれば保育士になる自由があります。
高齢者福祉に貢献したいのであれば介護福祉士になれる自由があります。
もちろん資格はいりますが。
それゆえに労働者は追い詰められます。
今日も残業か…
でも子どもが好きで保育士になったんだから、子どもたちが喜ぶ壁紙制作もがんばらなきゃ…
仕事がきついな…
でも利用者さんの「ありがとう」に支えられている自分もいる。
今日もちょっと頭が痛いけどなんとか乗り切ろう。
2つ目の自由は、「生産手段からの自由」です。
このフレーズ内の「自由」は「ない」という意味です。
「ストレスフリー」ということばの「フリー」と同じ用法ですね。
つまり労働者は生産手段からフリーであるということです。
生産手段のない労働者はだれかに雇用されることでしか生活費を得ることができません。
この仕事辞めたい…
でも辞めたあとはどうやって生きていけばいいんだろう…
これら「2つの自由」によって労働者は、責任感や不安感を募らせていくことになります。
そして、悲劇は起きます。
それは、ある非常に名高い宮廷婦人服製造所に雇われ、エリズという優しい名の婦人に搾取されていた二〇歳の女工メアリー・アン・ウォークリーの死亡に関するものだった。(中略)女工たちは一日平均十六時間半、だが社交シーズンともなれば三〇時間休みなく働いた。彼女たちの「労働力」が萎えてくると、シェリー酒やポートワイン、コーヒーが与えられ、労働を続けさせられたという。そして、悲劇は社交季節のピークに起きた。(中略)メアリー・アン・ウォークリーは、他の六〇人の女工たちとともに、必要な空気の三分の一も与えないような一室に三〇人ずつ入って、二六時間半休みなく働き、夜は一つの寝室を幾つかの板で仕切った息詰まる部屋で、一つのベットに二人ずつ寝かされた。しかも、これは、ロンドンでも良いほうの婦人服製造工場の一つだったのである。
『100分de名著』(2021年1月号)に引用されている『資本論』(269~270)より引用
孫引きすみません。
学生さんはまねしないで。
このような悲劇は今もずっとくり返されています。
2015年に過労死された高橋まつりさんの母である高橋美幸さんのツイートを引用します。
資本の力が我々を歯車のように働かせ続ける
— 高橋 幸美 (@yuki843003) 2021年1月10日
人間が作った社会システムに殺される
人はわかっているのに止めることができない
日本では産業革命の時代から過労死で若い娘が殺されている
岡谷の製糸工場の女工たちは1日に13〜14時間も働かされ諏訪湖、横川鉄道に身を投げた#高橋まつり 同じだ pic.twitter.com/wiPtBEENAW
人間はいつまでこのような悲劇をくり返せば気が済むのでしょうか。
週休3日制で豊かな社会へ…?!
わたしは発達障害があります。
それゆえなのかはわかりませんが、今のところ週40時間労働はかなり難しいと思っています。
以前、週平均30時間労働で働いていたのですが、片耳が聞こえづらくなったりしたこともありました。
労働時間を短くしてほしいと現場責任者に交渉したことがあります。
怒られました…。
わたしが働いていた頃の障害者雇用促進法では、精神障害者は週平均30時間以上働いてやっと障害者を1人雇用したと計算されます。
これによって事業主は障害者雇用1人分の助成金が得られる、または罰金を免れます。
現在は改正され週20時間以上働いていれば精神障害者を1人雇用していることになりました。
そもそも障害がなくても週40時間働くのはしんどいんじゃないかなと思います。
フィンランドではマリン首相が、週休3日制の実現を目指しているそうです。
1日に6時間だけ働いて週3日も休んでも生活に困らない社会…
いいなと思います。
長時間働いていたら判断能力や冷静さ、ゆとりを失う気がします。
もっと多くの人が、読書や芸術を楽しむ時間や、わが子と過ごす時間を待ってほしいなと思います。
読書や芸術によって心が揺さぶられることや、愛するわが子の笑顔をたくさん増やすことも大切な「富」かもしれないなとわたしは思います。
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