映画のネタバレはありませんので安心してご覧ください。
こんにちは。
『パラサイト 半地下の家族』を観て憂うつな気持ちになったふくです。
その日の体調によっては吐きそうになるので気をつけてください…
この映画『パラサイト 半地下の家族』のテーマは「格差」でした。
現代社会の縮図のようなものを2時間強で見たので心にくるものがありました。
社会に翻弄された人々が行き着く先に希望を見出せずにこの映画は幕を閉じます。
行き過ぎた資本主義社会によってもたらされたこの「格差」について、150年ほど前から警鐘を鳴らしていたのがカール・マルクスです。
2021年1月の『100分de名著』ではマルクスの『資本論』を扱います。
なぜ人々は資本主義社会のシステムに振り回されてしまうのだろう…と考え込む安部みちこアナウンサーと伊集院光さんに対して、
「マルクスってそれを解放してくれる力があるんですよね」
指南役の斉藤幸平先生はおっしゃいました。
わたしと同じ歳でしたつらい…
カール・マルクスの『資本論』を学べば希望を見出せるのでしょうか。
「物質代謝」がうまく機能していない…?!
『資本論』を学ぶために押えておかなければならない概念がいくつかあります。
「物質代謝」もそのうちのひとつです。
指南役の斉藤先生によると、マルクスは「物質代謝」という概念を以下のような意味で取り扱っています。
ありとあらゆるこの地球上で生きている生命を持ってる生物たちが
呼吸とか何かものを食べたりとかっていうのは
自然に働きかけてそれを摂取して消化して別のものとして排泄する。
そういう循環の過程をマルクスは「物質代謝」というふうに呼んでるんですけれども。
斉藤幸平先生
先生のこの説明を聞いた伊集院光さんはこのように返しています。
これ(物質代謝)のバランスが非常に悪いというのは
いくら無知な自分でもよく分かるので。
注)カッコ内はブログ運営者の補足
伊集院さんは鋭いお方ですよね…。
それにしてもなぜこの「物質代謝」はうまく機能しなくなったのでしょうか。
『100分de名著』によると「囲い込み」がきっかけだそうです。
高校世界史で習ったような気がする…?
商品に振り回される私たち
先ほどの章では「物質代謝」がうまくいっていないというお話をしました。
そのきっかけが「囲い込み」であり、これが資本主義社会の始まりだったのかもしれません。
格差の始まり
15世紀以降のイギリスで行われた「囲い込み」によって、小作人たちは共同農地から追い出されてしまいました。
そして衣食住に困った小作人たちが都会へやって来て、商品の生産者かつ商品の消費者となったのでした。
この「囲い込み」以前、小作人たちは共同農地内であれば必要な食料を生産しそれを消費するために金銭を支払う必要がありませんでした。
ところがこの「囲い込み」により、共同農地を失った彼らは同じ生産,消費に対して、労働を提供して金銭を支払わなければならなくなったのです。
資本主義社会の暴走
土地所有者や工場経営者などはますますお金持ちになっていく一方、労働者たちはますます貧しくなっていきます。
ある程度のところで止まってくれればいいんですけどね…。
なぜ格差が広がっていくのでしょう。
『100分de名著』2021年1月号のテキストによると、昔は今ほど格差が広がらなかったようですね。
資本主義以前の労働は、具体的な目的のために行われていたからだそうです。
たとえば、超わがままなやりたい放題の王さまがいたとしても、パイナップルを一生涯で100万個は食べないでしょう。
わたしはパイナップルが好きです(どうでもいい
ところが某オンラインストアのCEOはちがうんです。
わたしの所有資産は数千億ドルを超えたけどまだまだオンラインストアを続けるよ!
みんなわたしのオンラインストアでどんどん商品を買ってね!
パイナップルが1000億個以上食べられるだけの資産を持っていてもまだまだ資産を増やすつもりのようです。
これこそが資本主義なのだそうです。
どんなに資産を増やしても目先の利潤追求をやめられない…。
そのためにますます格差が広がっていくわけです。
使えるものより売れるもの
某オンラインストアのCEOのことは一旦置いておいて、一般的なCEO(?)について考えてみましょう。
おそらく多くのCEOは思うはずです、大きな利益を出したいと。
そのためには売れるものをジャンジャン生産して、たくさんの人にジャンジャン買ってもらう必要があります。
ときにその売れるものは必要なものではないこともあります。
『資本論』によると、商品には2つの顔があるそうです。
商品の2つの顔
使用価値:人間にとって役に立つこと
価値:ある商品と別の商品を交換する際に必要な「共通した基準」
「価値」はこの場合、商品の値段と考えると分かりやすいかもしれません。
そして「使用価値」の高いものよりも「価値」の高いものを優先して生産した結果、人々はものに振り回されることになります。
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『パラサイト 半地下の家族』を例に考えてみる
…わかりにくかったでしょうか?
ごめんなさい。
このブログをきっかけに興味をもたれた方は、今日以降の『100分de名著』の番組やテキストにて学習を深めていただけると大変うれしいです。
ですがせっかくなのでもっと分かりやすくお伝えしたいです。
ちょうど先日『パラサイト 半地下の家族』が放送されましたので、この映画で描かれている格差について『資本論』の知識を取り入れつつ考えてみましょう。
『パラサイト 半地下の家族』で描かれる「物象化」
主人公のキム・ギテクは半地下という劣悪な環境で生活しています。
彼とその家族は格差社会の下層というわけですね。
この主人公、実は仕事で失敗しています。
台湾カステラのブームがやって来たときに、台湾カステラ関連の仕事をしていたらしいのですが、メディアで台湾カステラの悪評が広まったことにより台湾カステラの売れ行きが一気に悪くなりました。
『資本論』の考えでこのことを説明するなら、主人公ギテクは台湾カステラの「使用価値」にはほとんど興味がなかったと思います。
おそらく台湾カステラの消費者もそうでしょう。
そのため悪評をきっかけに台湾カステラは一気に「価値」を落とし、売れるものではなくなってしまいましたから。
本当に台湾カステラのおいしさをはじめとする「使用価値」を認めていたら悪評なんかに屈しませんし、悪評のほとぼりが冷めたらまた台湾カステラは売れるでしょう。
わたしは何を言われようがパイナップルが好きだ!!
「価値」のためにモノを作る資本主義社会のもとで、人間とモノの立場が逆転してモノに支配される現象を、「物象化」とマルクスは呼んだそうです。
この主人公ギテクはまさに台湾カステラの「価値」のために労働した結果、台湾カステラの「価値」の暴落をきっかけに人生が転落してしまいました。
台湾カステラというモノに振り回されています。
『パラサイト 半地下の家族』で描かれる格差
マルクスはこの映画のような現代社会を予想していたのでしょうか。
18世紀頃のイギリス産業革命時もかなり劣悪な環境で生活していた人々が多かったはすなので、マルクスがもしこの映画を見てもあまり驚かないかもしれませんね。
『パラサイト 半地下の家族』を視聴したわたしは、一生涯覆せないであろう格差を感じて絶望することしかできませんでした。
この映画で描かれている格差は、個々人の自業自得だとは言えないものだと思います。
仮に主人公の半地下の生活が主人公の落ち度であったとしても(百歩譲って!)、じゃあなぜ勉強熱心な息子のギウや美術の才能がある娘のギジョンは這い上がれないのでしょうか。
なぜヨンギョは大富豪なのでしょうか。
商品の「価値」は目まぐるしく変化するのに、人々の格差は代々受け継がれて固定されているような気がするのは気のせいですかね?
今日(2021年1月11日)の夜、『100分de名著』の放送があります。
『パラサイト 半地下の家族』で描かれていた格差を思い出しつつ、しっかり学ぼうと思います。
本ページの情報は2021年1月時点のものです。
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